成長因子は、美容分野だけでなく、近年目覚ましい発展を遂げている「再生医療」の分野においても、非常に重要な鍵を握る存在として大きな期待が寄せられています。再生医療とは、病気や怪我などによって失われた組織や臓器の機能を、自分自身の細胞や組織を使って修復・再生させる医療技術のことです。この再生医療において、成長因子は細胞の増殖や分化をコントロールし、組織の再生を促すための重要なシグナル分子として活躍します。例えば、皮膚の再生医療では、患者自身の皮膚細胞を培養し、それを移植する際に、EGF(上皮成長因子)やFGF(線維芽細胞成長因子)などを添加することで、皮膚の生着率を高めたり、再生を早めたりする研究が行われています。重度のやけどや皮膚潰瘍の治療などへの応用が期待されています。また、骨や軟骨の再生においても、成長因子は重要な役割を果たします。骨折の治癒を促進したり、変形性関節症などで損傷した軟骨を再生させたりするために、骨形成を促すBMP(骨形成タンパク質)や、軟骨細胞の増殖を促す成長因子などを利用する研究が進められています。さらに、心筋梗塞でダメージを受けた心筋細胞や、神経損傷による機能障害など、これまで修復が困難とされてきた組織の再生においても、VEGF(血管内皮細胞成長因子)による血管新生の促進や、神経栄養因子による神経細胞の保護・再生といった、成長因子を用いたアプローチが研究されています。近年注目されているiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いた再生医療においても、目的の細胞へと分化誘導する過程で、様々な成長因子が重要なツールとして使用されています。このように、成長因子は、細胞に働きかけて組織の再生を促すという基本的な機能を通じて、再生医療の様々な場面で不可欠な役割を担っています。まだ研究段階のものも多いですが、成長因子のさらなる解明と応用技術の発展により、将来的にはこれまで治療が困難だった病気や怪我に対する新たな治療法が生まれる可能性を秘めているのです。
— 円形脱毛症 —
再生医療の鍵を握る?成長因子の驚くべき可能性
2023年10月3日